ブルゴーニュの三ツ星生産者に名を連ねる常連
ドニ・モルテはブルゴーニュ地方、ジュヴレ・シャンベルタン村に拠点を構えるドメーヌです。非常に有名なワインの造り手であり、その実力は
ロマネ・コンティやルロワに並ぶ“三つ星常連”の生産者とも言われています。
元々はシャルル・モルテというドメーヌがあり、ドニ・モルテ氏は父であるシャルル・モルテ氏のもとでワイン造りを行なっていました。17歳からワイン造りに携わっていた彼は、1991年に父が引退したことをきっかけに跡を継ぐことになります。その際、
父の畑をドニ氏とティエリ氏の2人が分割相続することとなったため、「ドメーヌ・ドニ・モルテ」として新たなスタートを切ることとなりました。そこからドメーヌ・ドニ・モルテは、代替わりもしながら30年以上の歴史が続いています。
ドニ・モルテ氏のワイン造りは非常にレベルが高く、各方面からの高い評価を受けていました。ブルゴーニュの神様と呼ばれたアンリ・ジャイエ氏からワイン造りを学んだドニ氏は、
ブドウを厳しく選果すること、収量を減らして生産することにこだわります。そして自らが畑に関わり、苗木と向き合いながら適切な栽培と管理を行っていました。こうして生まれたワインはワイン評論家から高い評価を受け、すぐさま人気のワイン、高級ワインとして名を連ねるようになります。
重厚で豪華絢爛なドニ氏のワインは、熱狂的な人気を集め一気にトップクラスへと駆け上がることになったのです。
“パーカーポイント”で知られるワイン評論家のロバート・パーカー氏は、ドニ氏のことを
「ジュヴレ・シャンベルタンのスターになりうる」と絶賛します。またフランスでも非常に権威あるワイン雑誌と言われるル・クラスマンでは、ドニ・モルテのワインが
三ツ星の常連になります。評価が上がると当然価格も上がり、ドニ・モルテは高級ワインとしての確かな地位を築いていくこととなります。これは2006年、ドニ氏がその生涯を終えるまで続きました。
現在は息子のアルノー・モルテ氏が責任者を務める
才能が賞賛され一気に注目を集めていたドニ・モルテ氏でしたが、あまりの才ゆえか、2006年の1月に自ら命を断つ選択をします。ワイン生産者として活躍した期間は非常に短く、誰もがその早すぎる死にショックを隠しきれなかったほどです。
そんな中、ドニ氏の長男である
アルノー・モルテ氏が24歳という若さでドメーヌを背負う決意をします。アルノー氏は当時通っていた専門学校を中退し、メオ・カミュゼやドメーヌ・ルフレーヴ、そしてオーストラリアなどで修行を積み、そこからドメーヌ・ドニ・モルテを継承していくこととなります。
アルノー氏は父の意思を継ぎながらも、父の個性に頼りすぎるのではなく、自分らしさを表現したワイン造りに努めます。ドニ氏のワインは強い抽出の力強いワインでしたが、アルノー氏のワインは
力強さも残しながらフィネスやエレガンスが上手に表現されているのが特徴に挙げられます。化学肥料を用いない有機栽培を行い、樹齢の高い樹々たちを丁寧に育て質のいいワインを仕上げていきます。そんなアルノー氏のワインは、一部では
父親以上とも言われるほど高い評価を集めています。
ちなみにアルノー氏はドメーヌ・ドニ・モルテの名を継承しながら、
自らの名前アルノー・モルテでもワインをリリースしています。彼らしい柔らかさと上品さを持ち合わせるワインが揃っている新しいワインなので、ぜひドニ・モルテと合わせてチェックしてみましょう。
シャンベルタンやクロ・ド・ヴージョの特級ワインが特に人気
ドメーヌ・ドニ・モルテといえば、ドニ氏が作った2種のワイン
「シャンベルタン」そして
「クロ・ド・ヴージョ」が人気です。いずれも特級畑(グラン・クリュ)のワインで、高額かつ入手は非常に困難です。
シャンベルタンはドニ・モルテの中でもトップ・キュヴェで、面積はわずか0.15ヘクタールしかありません。極小の区画から作られるピノ・ノワールの赤ワインは、非常に芳醇でエレガント、シャンベルタンの中でも最高位とまで言われています。
そして
クロ・ド・ヴージョは、ビターチェリーのようなニュアンスを持つ凝縮された赤ワインで、長期熟成に向いています。熟成させたのちに開栓すると、角が削られたシルクのような口当たりを楽しむことができるようになります。
元々評価の高いドニ・モルテ氏のグラン・クリュですが、すでにドニ氏が故人となっていることからプレミア化も進んでいます。古いヴィンテージのドニ・モルテのワインには、
1本数十万円という値がつけられているケースがあります。
ドニ・モルテの所有畑と特徴!村名ワインも高評価に
先ほど紹介したシャンベルタンやクロ・ド・ヴージョ以外にも、
ドニ・モルテの畑には様々なグラン・クリュとプルミエ・クリュ(一級畑)があります。またドニ・モルテはお値打ちワインの評価も非常に高く、
「マルサネ」や「フィサン」などヴィラージュと呼ばれる村名ワインにも人気ボトルが多く存在します。以下のようなワインがあるのでぜひチェックしてみましょう。
- ・シャンベルタン・・・ドニ・モルテが誇る人気NO.1のワインで非常に希少なグラン・クリュ。
- ・クロ・ド・ヴージョ・・・ドニ氏時代から受け継がれるグラン・クリュで、長期熟成むきの高級人気ワイン。
- ・マジ・シャンベルタン・・・0.25ヘクタールのグラン・クリュで、2014年から加わった希少なキュヴェ。ボディのしっかりとした堅牢な味わい。
- ・ボンヌ・マール・・・こちらもグラン・クリュで、2014年に新たに取得。日当たりの良い畑で育ったブドウがもたらすパワフルさが特徴。
- ・エシェゾー・・・2014年に取得したグラン・クリュの一つ。透明感のある酒質と、その中にしっかりと輝くボディ感。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・ラヴォー・サン・ジャック・・・グラン・クリュに匹敵すると言われるプルミエ・クリュ。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・レ・シャンポー・・・ジュヴレ・シャンベルタン北端に位置するプルミエ・クリュで、ドニ・モルテの典型スタイルが再現されたワイン。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・レ・シャンポネ・・・わずかな区画のプルミエ・クリュで、通常年はアッサンブラージュされることが多いため単独仕立てのワインは希少。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・プルミエ・クリュ・・・ジュヴレ・シャンベルタンの4つの区画をアッサンブラージュして作るワイン。「シェルボード」「プティット・シャペル」「シャンポネ」「ベレール」が含まれる。
- ・シャンボール・ミュジニー・オー・ボー・ブラン・・・シャンボール・ミュジニーのプルミエ・クリュで、水はけの良い土地で生まれたブドウによる滑らかで上質な味が魅力。
- ・マルサネ・レ・ロンジュロワ・・・村名ワインだが、一級昇格目前と言われるクオリティ。酸味とミネラルのバランスに優れている。
- ・フィサン・シャン・プヌボー・・・こちらも村名ワインで、希少で上質だが1万円台で買えるお値打ちの狙い目ワイン
- ・フィサン・ヴィエーユ・ヴィーニュ・・・フィサンの2つの畑をブレンドした村名ワインで、瑞々しい果実香としっかりとしたフィネスがある。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・アン・シャン・・・ゴージャスで新鮮なアロマをもつ上質なワイン。5〜15年ほどが飲み頃と言われる。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・ヴィエーユ・ヴィーニュ・・・重量感、華麗さを持つワインで、アルノー氏が引き継いでからは透明感と優雅さも感じられる。
- ・ジュヴレ・シャンベルタン・・・村名クラスのワインで、洗練された味わい。ボリュームのある果実味と、それを支えるタンニン・酸がある。