日本酒を語る上で欠かせないのが「純米吟醸」と呼ばれるお酒の存在です。純米吟醸は日本酒の一つで、特別な製法を守って造られたお酒だけが純米吟醸を名乗ることができます。
フルーティーで華やかな香りが特徴の純米吟醸酒は、ここ数十年ほどで急激に人気を集めてきました。近年では純米吟醸酒を造る酒造が増えており、気軽に飲める銘柄もずいぶん増えてきました。
そこで今回は、純米吟醸酒とはいったいどのようなお酒なのか解説をしながら、おすすめの銘柄を紹介していきます。
目次
日本酒は、お米を原料として造られるお酒を指します。そして日本酒の中には使われる“原料”の違いや、どれだけお米を磨いたかという精米歩合などの条件により、「特定名称酒」と区分されるお酒があります。
純米吟醸酒は特定名称酒の一つであり、以下の製法で造られたお酒のことを指します。
時間をかけてお酒を発酵させる吟醸造りで造られたお酒は、独特な吟醸香を持つようになります。吟醸香は非常にフルーティーな香りであり、口当たりもやさしいものが多いです。また原料に醸造アルコールを使っていないため、米本来の旨味や香りを堪能できるのが純米吟醸酒の特徴と言えます。
純米吟醸酒や純米大吟醸酒は、香りを楽しむお酒です。美味しく飲むためには、少し冷やして飲むのがおすすめです。冷やすことにより、より吟醸香を感じやすくなります。
なお吟醸香のするお酒は、あたためてしまうと風味が損なわれる点に注意です。中には南部美人のように燗酒でも楽しめるボトルがありますが、基本的には燗酒にはしないほうがベターです。
冷やした純米吟醸酒は、お猪口で飲むほかグラスで飲むのもおすすめです。料理に合わせて、ワイングラスなどちょっと変わった器に入れて飲むのも良いでしょう。
いよいよ大吟醸造りはじまるよ!
今日は山田錦を35%まで磨いたお米を、洗米しました。
作業後、ドヤ顔で最近取り入れた洗米(&浸漬)方法についてをレクチャーする杜氏の画像つき! pic.twitter.com/qXObpnSmi4— 石川酒造(東京福生) (@tamaji_man) January 7, 2020
純米吟醸酒を知るためには、まず「吟醸造り」がどのような製法であるのかを理解しておきましょう。
吟醸造りは、国税庁によって下記の様に定義されています。
特別に吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造すること
引用元:精米歩合とは|国税庁
具体的にはお米を精米歩合60%以下になるまでよく磨き、10度前後の低温でゆっくりと時間をかけて発酵させます。発酵にかかる期間はおよそ1ヶ月程度であり、長時間低温発酵することで香り成分が逃げずに醪(もろみ)に閉じ込められるようになります。この閉じ込められた香りが後の吟醸香になり、本醸造酒や普通の純米酒では生まれない「華やかさ」の元になっています。
なお定義上では「特有な芳香(吟香)を有するように醸造」とありますが、実は吟醸造りにおいて、特定の酵母を使わなければならないと言ったルールは存在しません。ワインの特定名称のように原料や酵母の種類が細かく決められているわけではないので、純米吟醸酒は自由度の高いお酒と言えます。そのため、共通してフルーティーな吟醸香はありますが、銘柄ごとに香りや味の印象は全く違ったものになります。
純米吟醸酒を見分けるコツは、ラベルを見ることです。純米吟醸酒として売り出されたお酒は、ラベルのどこかに「純米吟醸」と記載されていることが多いのでぜひチェックしてみましょう。
なおラベルを見ていると、純米吟醸の他に「純米大吟醸」と書かれたものもあります。純米大吟醸は純米吟醸と同じように、よく磨いたお米を低温発酵させて造った香りの高いお酒ではありますが、純米吟醸酒とは精米歩合が異なります。
具体的には、純米吟醸酒が精米歩合60%以下のものを指すのに対し、純米大吟醸酒はさらにお米を磨いた精米歩合50%以下のものを言います。磨きが多い分、純米大吟醸酒は純米吟醸よりもさらに雑味が少なく透明感があるのが特徴です。
純米吟醸のお酒は、精米や発酵の手間がかかるため、本醸造酒や純米酒などに比べて高級品として扱われることが多いです。実際に同じ銘柄で比べてみると、本醸造酒・純米酒のボトルよりも「純米吟醸」や「純米大吟醸」のボトルの方が値段も高くなります。
もちろん本醸造や純米酒が悪いお酒というわけではありませんが、味わいや香りも華やかでリッチなので、純米吟醸や純米大吟醸のボトルは人気があります。
さらに純米吟醸・純米大吟醸のお酒は、雑味が少なく飲みやすいものが多いです。そのため自宅用はもちろん、ギフトとしての需要も高いです。
純米吟醸・純米大吟醸に当てはまらない特定名称酒には、「本醸造酒」や「純米酒」などがあります。それぞれについて解説していきます。
本醸造酒は原料に米・米麹・醸造アルコール・水を使用したお酒です。精米歩合が70%以下のものが、本醸造酒を名乗ることができます。
醸造アルコールを使って造られているため、キリッとした淡麗さがあるお酒です。基本的には純米吟醸酒などよりも、手に届きやすい価格帯で売られていることが多いです。
純米酒は米・米麹・水のみを原料にしたお酒です。本醸造酒に比べ醸造アルコールを添加していないので、米本来のコクや旨味を感じやすいです。なお精米歩合に関しては、特にルールはありません。
純米酒は吟醸酒に比べると、低温発酵していない分香りは強くありません。吟醸酒が繊細さ・上品さを持つのに対し、純米酒は親しみやすくコクを楽しめるお酒だと言えます。吟醸酒に比べてどんな飲み方でも楽しめるのが純米酒の魅力であり、特に燗酒派には人気があります。
ここからは純米吟醸酒や純米大吟醸酒を選ぶ際に注目すべきポイントを解説します。美味しい吟醸酒を探したいという方は、ぜひ参考にしてください。
純米吟醸酒・純米大吟醸酒は、どれも精米歩合が低い、よくお米を削って造ったお酒です。その中でも精米歩合に違いがあり、数値が低ければ低いほど、より高度に精米されたお米が使われていることになります。
例えば「獺祭 純米大吟醸 磨き二割三分」の場合、精米歩合は23%まで磨かれたお米が原料に使われています。ギリギリまでお米を磨くことにより、雑味やくどさが削ぎ落とされた、すっきりとした日本酒に仕上がっているのが特徴です。
同じ純米吟醸酒であっても、原料となるお米の種類によって香りや風味が変わります。お酒選びの際には、ぜひ原料米にも注目してみましょう。
例えば酒米の王様と言われる「山田錦」は、粒が大きく純米吟醸に適したお米とされています。造られるお酒は香りが高く、まろやかなコクを持ち合わせたものになります。寒冷地で造られる「美山錦」の場合、キレのある淡麗な味わいになります。
このように、お酒の味は酒米によっても変わります。酒米の種類はラベルに記載されていることも多いので、ぜひチェックしてみましょう。
純米吟醸酒・純米大吟醸酒は日本全国で造られています。地域によって味わいに差があるので、お酒選びの際は何県産のものなのかを調べてみるのもありです。
例えば米どころと言われる秋田や新潟は、淡麗辛口のお酒が多いです。寒さの目立つ地方は淡麗な味わいのお酒を造っているところが多い一方で、岩手県は“南部杜氏”の伝統を受け継いでおり濃醇甘口のお酒が多く造られています。
日本海側には魚に合うようなキリッとした純米吟醸酒が多く、食文化を受け継いでいる岡山や山口などには濃醇甘口のお酒が多いです。
その他有名どころだと、濃醇辛口の男酒で有名な兵庫県、甘口の女酒で有名な京都府などもあります。このように日本酒は地域によって特色が変わるので、飲み比べてお気に入りを探してみると良いでしょう。
日本酒の甘口・辛口は、主に「日本酒度」で決定します。日本酒度はお酒の中にどれだけ糖分が含まれているかを表す数値であり、0を基準にマイナスであれば甘口、プラスの値が大きくなるほど辛口になります。
また日本酒度のほか「酸度」も味を比べる指標の一つとなります。酸度は日本酒にどれだけ酸が含まれているのかを現した値で、数値が大きくなるほど酸味が強く辛口に感じやすいです。
純米吟醸酒選びの際には、アルコール度数にも注目してみましょう。基本的に加水されて販売される日本酒はアルコール度数がおよそ15度〜16度に設定されているものが多いですが、ものによっては10度前後の低アルコールのものや、反対に加水されない18度程度の原酒もあります。
日本酒のアルコール度数は、ラベルの裏面や箱に記載されていることが多いです。自身のお酒の強さや好みの味わいに合わせて、アルコール度数を選んでみてください。
フルーティーな吟醸香、そして米由来の旨味が堪能できるのが純米吟醸酒の特徴です。さまざまな有名ブランドが純米吟醸酒を販売しているので、ぜひ飲み比べてお気に入りを探してみてください。
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